「今の仕事、もう辞めたい・・・」
と思うのは、介護のお仕事に限ったことではありません。
どんな職場でも、辞めちゃう人って出てきますよね。
それは、個人的な事情だったり、職場に問題があったり、その人にしか分からない理由があるもの。
介護職で実際に辞めていった人たちは、どんな理由があると思いますか?
「介護の仕事が嫌だから」だけではない
「介護のお仕事は辞めていく人が多い」
というイメージが昔はありました。
ですが、具体的にどんな理由で辞めていったかは、意外と知られていないものです。
ここでは、実際に辞めていった人たちの姿を紹介したいと思います。
お給料が少なかった
介護職ではたらく人のお給料は、国が決める「利用者からもらうサービス料」(介護報酬)から支払われています。
介護業界は、成長産業として注目を集めていますが、まだまだ開業したばかりであったり発展途上な施設や事業所が多く、満足のいく額を払えているところは少ないのが現実です。
お給料は生活に直結するため、介護の仕事を続けたくてもお給料が低かったら難しいですもんね・・・。
ですが、2015年に介護報酬が引き下げられたことを機に、儲けのある施設や事業所は職員の待遇を改善することが求められています。
また、今は、条件を満たせば働いている人のお給料が増えるような取り組みも、国が進めているんですよ。
「介護職のお仕事って稼げるよ?」と胸を張って言えるようになる日が来るのも、近いかも?
職場の人間関係に不満があった
職場の人間関係は、どの職種でも関係なく誰もが悩むところですね。
介護職だけがひどいということではなく、解決できなかったから去っていく、という人はどこも変わらないのかも・・・。
上司に相談してみる、配置転換をお願いするなど、まずはひとりで抱え込まずに誰かに話してみることで、楽になることもあります。
今は介護業界で働く人専門のホットライン(「介護ホットライン」)もあるので、苦しい時はこういうものも利用すると良いですね。
職場のやり方に不満があった
会社の理念や信念が自分の理想とは違う、ということはあると思います。
特に介護のお仕事はお世話をする人の幸せにダイレクトに繋がるものが多く、やりたいことを止められたり、納得のいかないやり方を強制されたりすると、やる気をなくしてしまいますよね。
そんな時は、ほかの施設や事業所に転職したり、派遣会社に登録して自分に合う会社を探してもらうなど、働く場所を変えることも、選択肢のひとつではないでしょうか。
介護のお仕事そのものをやめてしまうのではなく、環境を変えてみることで解決する場合もあります。
体力的にきつい仕事だった
介護の現場では、入浴のお手伝いをしたり、ベッドの上で体位を変えたりと、肉体労働が多いことは確かです。
特に腰痛で悩まされる人は多いと思います。
年をとって体力的に不安になったので辞めた、という人もいます。
そのような現場での悩みを改善するために、最近は、ひとりの利用者さんに対して複数の職員でお世話をするユニットというグループを作る施設や事業所も増えてきました。
また、今はロボットが人間の代わりに現場の仕事をする計画も進められていて、今後はさらに職員の負担も減っていくことが考えられます。
精神的にきつい仕事だった
利用者さんの中には、暴言を吐いたり暴力を振るったりする人もいて、お世話をしていて理不尽な思いをすることがありますよね。
お世話を続けていく中で、慣れない作業に戸惑うことも多いと思います。
人と密着して仕事をする介護職ならではの悩みかもしれませんが、そんな時は、同僚に話を聞いてもらう、仕事以外の趣味に没頭するなど、上手にストレスを発散することも大切ですね。
確かに、介護職のお仕事は忍耐力も必要です。
辛抱強く相手と向き合うことを求められますが、たまには肩の力を抜いてリラックスする時間を持つことも、介護のお仕事を長く続けていくコツかもしれません。
結婚、妊娠、出産、育児のためなど
男性の介護士も増えてきたとはいえ、まだまだ女性の職員が多い介護のお仕事。
結婚や出産などで、どうしても現場を離れざるを得ない時もありますよね。
職員の少ない施設や事業所では、産休からの復職までしっかり面倒をみてもらえることが難しく、仕方なく辞めてしまうことも・・・。
ですが今は、退職を防ぐために、積極的に産休や育休を職員に取らせたり、復職についても希望を聞いて勤務のスケジュールを立てるような施設や事業所が増えてきています。
人手不足が深刻な介護業界では、職員の待遇の改善も進んでいるんですね。
また、一度退職しても、生活が落ち着けば介護の世界に再就職、という人も多いのではないでしょうか。
介護の必要がある家族がいる
家族に高齢者がいて、介護が必要になった、という場合もあります。
これは家族の事情なので、致し方ないと思います。
家族のことで職場を辞めていく人は、介護のお仕事に関わらずいますよね。
また、働いている人自身が怪我や病気で辞めざるを得ないことだって、考えられることです。
将来の見通しがたたないため
「このまま介護の世界にいても、出世も昇給も望めないかも」
と思って辞めていく人もいます。
今までの介護業界は、昇給がない施設や事業所も多く、また資格を取得すればスキルアップは望めるけど、キャリアの道筋がはっきりしていない部分もありました。
先行きに不安を感じてしまうのは、やる気のある人ほど多いかもしれませんね。
現在国は、「介護プロフェッショナルキャリア段位制度」という、資格を持った人が現場でより実践的な力を身に付けたことを証明する仕組みを介護の現場へ導入しています。
これにより、段位(レベル)が上がれば上がるほど、現場だけではなく社会的にも認められる「介護のプロ」としてキャリアアップしていくことが可能になりました。
より専門的な仕事ができる、お給料が増える、転職での大きな武器になるなど、これからはさまざまなキャリアアップの方向を選択できるようになります。
今後、改善が進むものが多い「退職理由」
成長産業である介護業界は、現在、職員の待遇改善など働く人の環境を良くしていこうと、施設や事業所だけでなく国もそれを応援しています。
新しい制度や資格の設立なども進んでいて、今介護職で頑張っている人だけでなく、これから介護職で働こうという人も、多くの恩恵を受けることができるんですよ。
これからの退職理由は個人的なものに変わっていく!?
【参考】
「HELPMAN JAPAN 「介護サービス業 職業イメージ調査 2015」」(PDFファイル) 株式会社リクルートキャリア
上の図を見ると、男女ともに「体力的にきつい仕事だったから」「精神的にきつい仕事だったから」など、身体の負担が大きくて辞めていく人が多いことが分かります。
男性の方は「給与水準が低かった」「尊敬できる上司や仲間が少なかったから」も上位にきており、仕事へのモチベーションが上がらなかったことも、辞める理由になっています。
確かに、身体の負担は介護のお仕事では避けられないところもありますが、国は平成25年より「ロボット介護機器開発5ヵ年計画」という、介護の現場にロボットを導入する取り組みを始めています。
現場の仕事の中でも、特に肉体的な負担の多い入浴介助や排せつ介助などを、人間の代わりにロボットが行うことを目的に計画が進められていますが、これから導入する施設や事業所が増えれば、職員の負担は減っていくと思われます。
また、職員のお給料に関しても、国は定期的な昇給を行う施設や事業所には補助金を出す、他の職種との格差をなくすために条件を満たせばお給料に決まった額を上乗せするなど、さまざまな制度を打ち出しています。
実際に辞めていった人たちの理由の中には、今後改善が望めるものがたくさんあるんですね。
まとめ
いかがでしたか?
辞める理由は人それぞれですが、個人の事情でやむを得ない場合もありますし、介護の仕事が嫌だから、という理由がすべてではないのが現実です。
働き続けている人は辞める人よりずっと多く、離職率は年々下がってきています。
これからは今までより働きやすい職場が増えていき、退職する理由も以前とは変わっていくのではないでしょうか。
「人が辞めていく」イメージから「人がたくさん就職する」イメージへと、介護業界に対する見方もより良いものになっていくと思います。