介護保険というシステムが始まってから約10年。
国が集めた保険料から介護に関する業務へ支払われるわけですが、けっこう無茶苦茶な内容なのは皆さんも知っての通りです。
そんな中、「介護保険がガチガチに縛られているなら、保険料なんているかー!!」という潔いサービスを行っている会社が出てくるようになりました。
介護保険適用外でサービスを受ける
保険適用外のサービスってなんだから怪しい胡散臭さを感じますよね~。
でも、介護保険内でのできる行動というのは制限があるので、職員さんも利用者さんもかなり心身の負担になっている部分があると思います。
例えば訪問介護で、
- 認知症の奥さんのご飯は作っても旦那さんのご飯は作れない
- 犬の散歩はいけない
- お墓参りに付き添えない
など、介護保険を使っているとどうしてもサービスが行き届かなくなってしまいます。
そういった、行政の考えている介護と、実際に起こりうる介護の差を埋めるために介護保険を使わずにサービスを充実させるやり方が出てくるようになりました。
保険適用外になると利用者さんの負担も増えてしまうので、便利な利点ばかりではないのですけどね。
それでも、こういうサービスが出てくることによって、介護に必要だとアピールができるのは色んな面でいいことだと思います。
介護保険外サービス
もう、なんか介護関係の用語ってややこしすぎてついていくのが大変なんですけど、介護保険適用外のサービスのことを、縮めて介護保険外サービスと呼ばれます。ナンテヤヤコシイノダ・・・。
まず、介護保険で認められていないサービスというのがどの程度なのか下記を見ていただけますか?
■一般的に介護保険の家事援助の範囲に含まれないと考えられる事例
1.「直接本人の援助」に該当しない行為
主として家族の利便に供する行為又は家族が行うことが適当であると判断される行為
- 利用者以外のものに係る洗濯、調理、買い物、布団干し
- 主として利用者が使用する居室等以外の掃除
- 来客の応接(お茶、食事の手配等)
- 自家用車の洗車・清掃等
2.「日常生活の援助」に該当しない行為
①訪問介護員が行わなくても日常生活を営むのに支障が生じないと判断される行為
- 草むしり
- 花木の水やり
- 犬の散歩等ペットの世話等
②日常的に行われる家事の範囲を超える行為
- 家具・電気器具等の移動、修繕、模様替え
- 大掃除、窓のガラス磨き、床のワックスがけ
- 室内外家屋の修理、ペンキ塗り
- 植木の剪定等の園芸
- 正月、節句等のために特別な手間をかけて行う調理等
「指定訪問介護事業所の事業運営の取扱等について」より引用
確かにそうだよね~としかいえない。
利用者さん以外の買い出しすら認められていないけど、これって逆に認めてしまったら介護士なのか家政婦なのか分からなくなっちゃいますから。
最低限のことしか認められていないので、実際の現場では泣く泣くやらない人や、ばれないようにやっている人まで・・・ま、しょうがない部分はありますよね。
介護保険外サービスの使われ方
ある日突然の脳梗塞。
半身麻痺が残ってしまって介護される必要が出てしまった。
でも、毎日していた愛犬の散歩や、毎年の旦那さんや親族のお墓参りに行きたい。
キレイに手入れをしていた庭は荒れ放題だし、毎年集まっていた息子夫婦も呼べば負担になるから気軽に呼べなくなってしまった。
そう、介護が必要になる前はあたりまえの日常だったのに、もう「あたりまえの日常」が継続できなくなってしまうんですね。
その当たり前の日常を継続するために、介護保険外サービスが必要になるのです。
介護保険外サービスの弱点
介護保険は利用者負担は1割で、あとの残り9割は介護保険料から賄われています。
1割負担でも十分に高額なのですが、それが10割負担になってしまうので利用者さんの負担はかなり大きいものになってしまいます。
サービスの専門性を追求すれば、それだけ高額になってしまうので、負担金額との折り合いが難しい課題になりそうです。
現在は活用事例が少ないため、企業が参入するのに足踏みをしている状況なのです。
包括ケアの中での取り組み
高齢化スピードもあがって、人口割合も増えている中、2025年の団塊の世代が一斉に後期高齢者になってしまいます。
そこで、国策で「地域包括ケアプラン」と称して、なるべくお年寄りの要介護度が高くなっても自宅療養できるシステムを構築しようとしています。
すぐに特養などの施設に入ってしまうよりも、なるべく住み慣れた自宅での介護を支援してもらう方向にシフトしていく予定なのです。
基本的には包括ケアプランのキモとなるのは「地域の理解」なので、地域によって取り組み方は全然違います。
【参考】事例を通じて、我がまちの地域包括ケアを考えよう 「地域包括ケアシステム」事例集成~できること探しの素材集~
包括の中での介護保険外サービス
高齢者のニーズに合わせた利用のため、介護保険での範囲外をサポートするようになっています。
今のところは介護事業からの派生などで運営されていますが、ビジネスモデルとして確立されればそのまま一気に増えてくると思います。
事業者いろいろ その1
例えば、「埼玉ライフケア暮らしのお手伝いサービスさんの場合」だと
- 病院内の付き添い
- 趣味やお話しのお相手
- 犬の散歩
- 入院中の見守り、洗濯、お遣い
- 庭のお手入れ、水まき
- 小旅行の付き添い
- 墓参り、冠婚葬祭のお手伝い
- 観劇、映画鑑賞の付き添い
- 転院、一時退院の付き添い
- 家族外出によるお泊り介助見守り
こういった介護保険外サービスを運営されています。
利用料金も1時間で2000~3750円まで幅広く用意されているので、利用者さんにあった使い方が出来ます。
ただし、定期的に使える金額でもないのがネックですよね。
もう少し使う人が増えてくれば、また違った対応になってくるのを期待されています。
事業者いろいろ その2
「いきいきシニア応援事業」さんの場合だと、60代以上のリタイアされたシルバーの方々を対象にスタッフを募集されているので、保険適用外とはいえ一時間1750~3500円と大変リーズナブルな価格設定です。
- 家事代行
- 買い物代行
- ペットの散歩
- 屋外の掃除代行(屋外清掃、草取り・草むしりなど)
- 屋内の掃除代行(室内掃除、書類の整理など)
- 一人暮らしの高齢者のお話し相手(ご家族からの依頼)
- 身の回りの手伝い(病院の診察券出し、順番取り、役所等への手続き代行など)
- 引越し補助、模様替えの手伝い(家具移動など)
- お墓掃除
などなど、シルバー人材なので無理はできませんけど、その分経験を生かしたことができるサービスになっていますね。
介護以外の仕事がメインではありますけど、介護保険外サービスの範囲の仕事も請け負ってくれます。
介護保険外サービスの今後
いまいち需要がハッキリしないので、企業が参入しずらくなかなか整備されにくいし、介護保険外ということでイマイチどこも腰が重い印象です。
ただ、現状のままだと「街の便利屋さん」などと上手に手を取り合っていけば、歯車が上手に回っていきそうな気がします。
政府も「保険外サービズ活用ガイドブック」を策定しましたし、これからの需要が伸びてくるのは間違いないですね。